あなたはクラフトエヴィング商會さんをご存知ですか?
ご夫婦で本を作っていらっしゃる作家であり、装丁やポスターなどのデザインを手がける、デザイナーという顔も持つお2人です。
旦那さんは、個人名義でも本を出されている吉田篤弘さん。『つむじ風食堂の夜』が有名でしょうか。
クラフトエヴィング商會の名義で出されているご本はどれも、現実のような嘘のような、こんなのあったら面白いな~という空想が形を与えられたような物語たち。
お話の魅力、もの作りの魅力、本の魅力。
3つをぎゅっと詰め込んだ本ばかりです。
私がはじめてクラフトエヴィング商會さんに出会った本、『クラウド・コレクター』を紹介します。
クラウド・コレクターという2冊の旅行記
主人公の祖父が、『アゾット』という国を旅した時の手帳を紐解く…という仕立ての本。
単行本があり、文庫化もされています。
2冊の…と言うには理由がありまして、文庫はイラストが豊富な物語なのですが、単行本の方は写真とキャプションが主となっている図鑑のような本なのです。
タイトルは同じながら、異なった視点からの2冊と言っていいくらい、表情が変わります。
こういう所に、クラフトエヴィング商會のお2人の、本を大切にする心根を感じます。
本の形が変われば、それに合う中身も変わる。
文字の大きさや枠組みだけでなく、内容そのものも…という印象なのです。
空想を形にする楽しみ
『クラウド・コレクター』には、雲をあつめて詰め込んである…という瓶が出てきます。
単行本では、 “雲を採集した瓶” も、もちろん写真で紹介されています。
さまざまな色の瓶、中は空っぽに見えますが、違う時間や土地の雲が、それぞれに詰められている…。
こういう空想を、したことがある人って結構いると思うんです。
星が金平糖にだったら…とか、空の色を絵具にできたら…とか。
クラフトエヴィング商會さんは、それを実際に形にしていきます。
こんなに面白そうなこと…!と思うんですが、“実際作る”という発想は私の中になく、悔しいやら羨ましいやら。
というか、初めて読んだ小学生の時は、写真のものは全て、実在するものばかりだと思っていました。
その現実にありそう…!という驚きは、ぜひご自分の目で見て感じていただきたいです。
私がクラウドコレクターで好きなのは、『アゾット』という国のパスポートの数字に隠された秘密。
お酒のラベルの裏に印刷されたタロット、バッカスのタロットの話。
涙コレクションの話…などなど。
睡魔が人にとりつく小さな悪魔として描かれていたり、この世界の角度を少し変えたような、物語たちなのです。
妙に気になる言葉たち
本としての気持ちよさ、写真で登場するものたちの精巧さ、それらを生みだす発想…。
私がクラフトエヴィング商會さんに感じる大きな魅力です。
それから、なんだか引っかかる『言葉』たち。
真理をつくような言葉ある一方で、同音異義語で煙に巻く様なやりとりがあったり、韻を踏む言葉で遊んでいたり…と、『言葉』や『言葉遊び』が好きな方はとても楽しいと思います。
(私も、言葉遊びやラップがとても好きです)
クラウドコレクターは、“雲をつかむような不思議な話”
どうぞ、『本』という存在の愛おしさと、『物語』という世界の広がりを楽しんでください。
コメント